最後の教科は、あたしが一番嫌いで苦手で、池谷くんに中間テストのころからしごかれていた数学だった。


あんなに数式が魔界の文字に見えていたあたしにとって、全部解けたことは奇跡。


中間テストの時でさえ、全部解けなかったのに!!




「うそ……!柚、すごいじゃない!!」



「絵梨にゃんっ……!!だって留年したくないもん!みんなと3年生になりたいから!!」




そして、“将来の夢”を叶えたいから。


誰にも打ち明けていない、“夢”に一歩ずつ近づいていきたいから。


そんな密かな思いを胸に、勉強を頑張っていた。


それに、何よりもあたしを一番支えてくれたのは……絵梨にゃんからもらったココアの缶と、先生から貰ったお守り。


テストが始まって、あたしはずっとこの2つをカバンに入れて持ち歩いていた。


絵梨にゃんに何度も「飲みなよ」って言われたけど、あたしにはそんなこと出来なかった。



ふたりの気持ちが詰まった、あたしにとって大切なものだから。




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