「柚ー!お弁当出来たわよー!」
「ありがとうお母さん!今日も遅くなるから晩ご飯作れないの。ごめんね?」
「柚が気にすることじゃないわよ!柚はしっかりと勉強してきなさい。今の柚、すっごく輝いててお母さん応援したくなっちゃうもの!」
アイツとおばさんのやり取りを、どこか上の空で見ていた。
何も考えられない。
なんで……アイツの無邪気な笑顔が俺の心の中に居座ってるんだよ。
俺の中には鍵をかけた記憶――由梨の記憶が居座っていたはずなのに、なんでアイツの存在がいるんだよ。
もう……意味が分からない。
「じゃ、行ってきます!」
「あら、もう行くの?」
「うん。学校の先生も大丈夫って言ってくれたから!頑張ってくるね、先生!」
そう言い残して、アイツは嵐のごとく去って行った。
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