俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




俺は2階の廊下を歩き、階段を下りてダイニングを目指す。


ダイニングは明かりがついている。きっとおばさんが朝食の準備やアイツのお弁当を準備しているんだろう。


そんなことをボンヤリと考えながら、さっきまで見ていた夢に意識が集中する。



あんな夢を見たの、本当に久しぶりだ。


俺があまり思い出したくない高校時代の記憶。友人である水樹と由梨の夢。


あの2人が結婚すると耳にしたのは、確か2カ月前くらい。水樹が俺の携帯電話に電話を掛けてきたからだった。




――“俺さ、結婚する”


“ああ。おめでとう”――




こんなやり取りを交わし、水樹の指す相手が――由梨だったとすぐに勘付いた。


あの時必死に押し込めた、淡い恋心。


だれからかれこれ10年経つのに、あの時の傷がまだ癒えないなんて、未練タラタラなみっともない男だな、俺は。


あんな夢を見ても、まだありえない胸の鼓動が止まらない、なんて。




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