「……水樹らしくないぞ」
「朔夜」
「由梨はお前を選んだんだ。きっと由梨だって迷ったと思う。想いを伝えることで、俺たちの仲が壊れるんじゃないかって」
それでも、由梨は伝えたんだ。水樹に、自分の気持ちを。
ずっと隠して、蓋をしていた俺には、2人を責める権利なんてない。
「いい返事を返してやれよ。お前たちの幸せ、俺が一番願ってるから」
驚いている水樹の表情をしっかりと瞳に映すと、俺は背を向けて屋上を出て行った。
悔しい。好きな女が俺の一番の友達を選ぶなんて、男としてこんなに悔しいことはない。
ただ俺は、振り向かせる努力をしなかっただけだ。自分の気持ちを蓋をして、安定した関係を望んでいた俺への、罰。
これから人生を掛けて、この罰、受けようじゃないか。
屋上から教室に戻る間に、俺の心に鍵をかけ、“由梨と水樹の友人”を演じると心に誓った。
――これが、俺にとって、最初で最後の恋愛にする、つもりだった。
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