「それにしてもお姉ちゃんとお義兄さんと先生が同級生だったとはね……。あたしもビックリだよ」
「先生、水樹さんの前では普通だったのに、由梨さんの前になると想いを抑えきれないようにずっと俯いてた。
……すっごい好きだったんだなって思った、由梨さんのこと」
あの時は、先生に忘れられない人がいたっていう悲しさと、あたしのアタックで振り向かせられなかった悔しさが混ざって、気持ちがグチャグチャだったけど。
冷静になって、気付いた。
あれだけ想いを寄せる相手がいたら、お子様なあたしに振り向くはずがない。
ただあたしのタイプの人が居候することになって、王子様が登場した気分になったあたしは、ひとりで浮かれていただけだった。
王子様には、好きな人がいたのに。
「もう、先生のことは諦めるの?」
「そりゃまだ好きだし、諦めたくない。だけど、あたしのせいで先生にもうあんな顔させるのは嫌。だから……」
「だから……?」
「今は先生のこと忘れたい、かな?」
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