俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




その言葉にビックリして、思わず立ち止まってしまう。


目を大きく開いているあたしを見て、池谷くんはイジワルそうに笑ったまま、話を続ける。




「何も聞かない。けど、何かあったんだよな?」



「池谷くん……」



「バレバレなんだよ。最近の柚は無理して笑ってるの分かるから。ずっと柚のこと見てるんだから、様子がおかしいことなんてすぐ気付く」




そう言われて思い出したのは、池谷くんはあたしが好きという事実。


先生にキスされて避けられていたあの時期。仮病を使って学校から早退したときに言われた言葉が、頭の中を駆け巡る。




――“俺の告白はとりあえず保留でいいよ。柚を苦しめるだけだから。今から先生に診てもらって、心のわだかまりが解けたら教えて。

俺は柚の弱いところに付け込んで奪いたくないから。先生との関係性が元に戻ったら、堂々とアタックして柚を振り向かせるから”――




その言葉に甘えて、すっかり忘れていた。


池谷くんは、本気であたしをオトそうとしている。




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