車に向かおうとしている先生の服の袖を、咄嗟に掴んでしまう。
驚いた先生が、ようやくあたしに視線を向けてくれる。
「ダメ、ですか?」
「は……?」
「あたしじゃ、ダメなんですか……!?」
俯きながら放った言葉は、意外と響いて聞こえた。
周りにいたカップルや家族がチラチラをあたし達を見てくるのが分かったけど、そんなこと気にしていられなかった。
だって、このままだと先生が、消えてしまうそうだったから。
こんなにも弱くて儚い先生、初めて見たんだもん。
「何を言ってるんだ?意味が分からな――」
「先生、由梨さんのこと、好きなんですよね?」
疑惑をぶつけると、先生は下を向いて黙ってしまった。
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