その瞬間、先生の表情が少しだけ歪んだことを、あたしは見逃さなかった。
「あのな、お前……」
はぁ……とため息をつく先生は、自分の髪をグシャッと鷲掴みにする。整えられていた程よい長さの髪の毛が、形を崩していく。
こんなに余裕のなさそうな先生、初めて見たかも。
もしかして先生、具合が悪かったりする?
それだったら、大変だよ!
今すぐお父さんに知らせて、仕事を休ませてもらわないと!!
そんな風に考えて慌てだしたあたしを、先生が制止した。
「安心しろ。俺はお前みたいに体調は悪くない。ただの勘違いだ」
「そ、そんなにキツく言わなくても……」
「俺が好きすぎてとかいう理解しがたい理由で学校を早退してきた奴には、これくらい何ともないだろ?」
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