「先生。桜井さんなんですけど、今朝から熱があるみたいなので、俺が連れて帰ってもいいですか?」
「え……でも、お前家分かるのか?池谷」
「分かります。本当に体調が悪そうですし、送ってきます」
聞き覚えがある声が耳を突き抜けた瞬間、あたしは腕を掴まれて立っていた。
池谷くんは素早くあたしのカバンを持つと、桐生っちに向かって言い放つ。
「桜井さんを送り届けたらすぐに学校に戻りますから、いいですよね?」
「ま、まぁ……。池谷だったら任せられるな。桜井、今日はゆっくり休めよ!!」
笑顔で手を振ってくる桐生っちと心配そうに見守るクラスメイト、池谷くんを凝視する絵梨にゃんに見送られながら、あたしは池谷くんに引きずられて教室を出た。
あ、ありえない!!
熱なんてないし、ただボーっとしてただけなのに!!
それに、池谷くんも無理矢理教室から連れ出すマネなんかしちゃって、意味が分からないから!
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