俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




複雑な心境で受けた授業は、当然頭に入ってこない。


あたしは桐生っちが朗読している物語を無視して、窓の外を眺めていた。




「というわけで、主人公はこの瞬間、何を感じていたのか。桜井、答えてみろ」



「人の気持ちがすぐに分かったら、こんなに苦労はしないよ」




しまった。

心の声が漏れてしまっていたみたい。


恐る恐る桐生っちのほうを見てみると、怒るわけでもなく、はぁ……とため息をつかれていた。




「どうした桜井。いつものお前らしくないぞ?」



「うん、大丈夫。元気だから」




力なく笑って見せると、ガタンという音が教室中に響き渡った。


その音に驚いて、視線を向けてみると――




.