「お姉ちゃん今日はどうしたの? また先生に怒られちゃったの?」

「うるさい」

へらへら笑いながら琢磨が言う。まあ、よく出来たと言ってもこれくらいの事は言うさ。

デコピン一発で許してあげるなんて……私はなんて優しいお姉ちゃんなんでしょう!

「痛い……全然優しくないよ……痛いよ……」

半ベソでこっちを見る琢磨。フ……ちびっこが我慢出来るくらいに加減してあげているのだ。優しいに決まっている。

当たり前?
いや、知らんがな。

てか何故私は心を読まれたのか? 気になる所だが……。

いや、自分でもなんとなくわかってる。どうせあれだろ?

「私、うるさい以外になんか言った?」

「……自分で自分を優しいって……」

あ、やっぱり。

一日でどれだけこの癖出てるんだろうね? いい加減飽きてくるんじゃないの? 誰がとは言わないけど。

……ん?
私は一体何の事を考えてるんだ??

……わからん。

「由香ー。あんまし琢磨いじめちゃ駄目だよー?」

「はいよー」

私の思考に入り込んできたこのおっとりした口調の女は私の姉の雅(みやび)。家族一の不思議ちゃんで、時折意味不明な言動を見せるかなり危ない子。今年成人したのにこの性格は直らず、家族みんなが彼女の将来を心配している。

まあ、優しいし悪い人ではない。

「……飯」

呟いたのは父、玄武(げんぶ)。名前の通りで、とにかく固い男である。いわゆる堅物タイプの人間だが何故か無駄にダンディーな外見をしておりたまに逆ナンされるらしい。

シカトするらしいけど。

ちなみにテレビが白黒なのは彼のこだわりのせいだったりする。このこだわりのせいで友達を家に上げれない……テレビ見られたら恥ずかしいから。


「はい、それじゃあ食べようか!」

「いただきます!」
「いただきまーす」
「いただきーます」
「……モグモグ」

母の言葉にみんなそれぞれの返事をし、食べ始めた。一名フライングしてたけど。一名伸ばすとこ変だけど。

母は心優(みゆ)と言い、見た目より10歳くらい若く見えるがこれでも39歳。娘の目から見ても美人さんだと思う。性格は……姉から不思議ちゃんを引いて琢磨を足した感じ?

要はいい人です。はい。