「なぁんか、学校と違うっすね」



能天気なくらいあっけらかんと、大地が言った言葉に嫌みは感じなかった。



それは大地の口から出たからで、他の人ならそうはいかなかったろうと思う。



海翔様もそれはわかったらしく、特に怒りはしなかった。


だが返事もしなかった。



大地は小さく苦笑し、小さく手を上げて背を向け、来た道を戻っていった。




大地の姿が見えなくなると、

チッと小さな舌打ちが聞こえ、私の腕をおもいっきり引いて抱き寄せた。



バランスを崩した私は海翔様の胸にしこたま鼻を打ったが、それに構うことなくギュッと後頭部に腕が回る。



く、くるし……



ヘルプヘルプと海翔様の背中をぴしぴし叩くが、全く力が弱まる様子はなく、

逆にしめつけがきつくなる。



……い、いじめ!?

それとも、息の根を止めるつもり……!?



でも苦しい息を吐いたのは私ではなくて、

なぜか海翔様だった。



その切ない吐息に、私の心は揺れ動く。



だから、

ゆっくりと力が弱まったけど、

私から離れることは出来なかった。