ナツに向かって足を踏み出していた私は、

ヒュオォォォオとしか形容しがたいその空気に固まって、

ナツと海翔様の、静かだけどどこか物騒な微笑みを、びくびくと交互に見ることしか出来なかった。



史料室の時が止まる。



そしてその空気を粉々に粉砕したのは、ケバ子だった。



ケバ子はKYっぷりを見事に発揮し、フフンと鼻を鳴らしてナツに詰め寄った。



「海翔様の恋路を邪魔するヤツは、この花園可憐(はなぞの かれん)に蹴られるんだよ?」



ケバ子、あんた……

その先の私の心の中の台詞は、ナツが代弁してくれた。



「あんた……花園可憐っていうの……?」



そうだよ、と胸を張ったケバ子に、ナツの表情が変わった。



だよねー!

私もびっくりしたもん!!

言っちゃ悪いけど、超名前負……

「彼岸花のカレンってのはあんた?」



は?

なんだって??



「一度手合わせしたいと思ってたんだよね」



何の話デスカ……?