言葉のつまった私に、海翔様は悪魔の笑みを向けている。
かぁっと赤くなってそらした視線を、
試すように覗き込む。
高い身長からかがみこんでの上目遣いに、くらくらした。
海翔様の長い睫毛が、私に届いてしまうんじゃないかというくらいの近距離。
心のどこかで『またあとで』という天使スマイルを期待しながらも、
『選べ』という言葉が来るかもしれないと思ってしまう。
そもそもなんで自分がここにいるのかもわからなくなって、
海翔様の選択肢の意味もわからなくて、
海翔様の思惑も全然わからなくって、
不安に押し潰されそうになる。
「か、からかわないで……」
かろうじて出せたその言葉が海翔様に届いて、
眉をひそめられたことによりいっそう気持ちが不安定になる。
心外だとも、
バレたのかとも、
どうにでもとれるから、自分の気持ちを見失う。
何か、言って欲しい。
どうして私に構うのか、どうしてイジワルなことばかり言うのか。
そしてそのイジワルな顔は、
私にだけ見せているのかを。



