「バカ」
言葉は辛辣なのに、伸ばされた手は温かくて、なんだかホッとする。
腕を掴まれて引き上げられたけど、足がいうことをきかない。
すると私の体がふわりと浮いて、
「ねぇ……」
「なんだ」
「私が言うのもなんだけど、こういうときって普通はお姫様抱っこなんじゃないの?」
私は海翔様の肩に担がれていた。
米俵か!!
「お姫様抱っこは淑女になったらな」
なんだそれ。
「お前には、これで充分だ」
と言って、私のお尻をポンと叩いた。
鼓か!!
って……
「ななななななにやってんのー!!」
「何って、担いでるんだが」
「ちが……今、お尻触ったでしょ!!」
「こうか?」
と言って、もひとつポン。
「さ、触んな!!」
ポン。
「だから……」
ポン、ポン。
うわぁああんっ!!
むーかーつーくーっ!!
バタバタした足をものともせず、
ポン、ポン、ポン。
「おろして!!」
ふ、と笑った吐息が聞こえて、
「断る」
と言った海翔様は、私の部屋へと足を踏み入れた。



