そう言って、
羽のような軽さで唇に触れる。
たった一瞬だったけど、私のドキドキ臨界点を突破するには充分だった。
ぼんっと水蒸気が上がりそうなほど、
私のからだが沸騰したんじゃないかってほど、
熱く、熱くなって。
全身が心臓になり、
ちょっとの刺激でもまた
水蒸気が破裂しそう。
そんな私を見てちょっと困ったように、
「やべぇ。俺にまでうつりそー……」
なんて顔をそらすから、
私の中からもう出し尽くしたと思ってた水蒸気が、
ぼんっと跳ねた。
だってそれって
『うつる』って
私だけがドキドキしてるわけじゃないってことでしょ?
「意外……」
いつもポーカーフェイスで、
余裕な顔つきでイジワルばっかり言ってるのに。
たまには真っ赤になることも確かにあるけど、
ドキドキしてるなんて、
私にドキドキしてるなんて、
思ってなくて。
だから、意外。



