錯乱気味の思考のかげで、心臓が暴れ狂う。
だって生まれてこのかた、『可愛い』なんて言われたことないもの。
親や親戚には「人生、顔じゃないよ」と失礼な慰められ方をされ、
友達には「私は可愛いと思うよ?」と気を遣われ。
言われ慣れてない言葉が、
よもやこんなところで、こんなキラッキラした人に言われるとは思ってなくて。
でも嘘をついてる顔じゃないんだ。
王子の仮面じゃない。
麗しい悪魔の申し子みたいな、
そんな笑み。
なのになんでそんなに、
本当に思ってるという顔をしてるの?
ドキドキが止まらない。
視界にうつる海翔が、
格好よすぎる……っ
「これがウワサの胸キュンってやつなの……?」
「は?」
「な、なんでもないっ」
キュンというよりも
ドドドドドという感じなのが多少気になるところではあるけど。
これが世にいう胸キュンなのか。
「……そーなんじゃね?」
呟いた海翔はプイッと顔をそむけた。
耳まで真っ赤なのが見えてしまったのは内緒にしとこう。
だって今、私の方が真っ赤な顔をしてるだろうから。



