しん、と静まりかえる食堂の空気が、ピリッと張りつめた。



海翔のこめかみがヒクヒクし、口元もぷるぷる震えている。



形のよい唇が台無しだ。


そんなことを考える余裕があったのはきっと、

あまりの感情の起伏に自分がついていけなかったからだろうと判断する。



つまり、パニックを起こしすぎて、

思考が真っ白になったぶん、余計なことを考えてしまったということ。



そしたら、海翔の唇がゆっくりと開かれた。



──怒られる!



とっさに目をぎゅっとつむった私に、

信じ固いものが聞こえてきた。



「ぷっ」



え?

と思って思わず目を開けると、

海翔とばったり目が合う。



とたん、

堪えきれなくなったように、海翔が笑いだした。



ひーひー言いながら涙を浮かべて笑う海翔。



それはきっと私のお腹の音のせい。



かああああっと顔に血がのぼり、朱がさすどころか、

真っ赤な絵の具に顔をダイブさせたかのようになってるに違いない。



「どんだけ腹へってんだよ」


まだ笑いながらもなんとか紡がれた言葉が優しくて、

ほっとした。