顔色は変わらぬまま、表情だけが険しくなった海翔の視線をたどるようにして、私は後ろを振り返る。



そこにいたのは大地だった。



揉み合った跡がしわになった制服を着た大地は、たるそうに首に手を当て、左右にコキコキと動かす。



その所作に海翔は、不機嫌そうに言った。



「牽制も込めているからな」

「そーっすか」



意味のわからない会話を繰り出してる二人を、きょろきょろと交互に見ることしか出来ない。



「何きょろきょろしてんだ。

お前は俺だけを見てればいいって言っただろう」



海翔の軽い叱責が飛んできて、私の混乱に拍車がかかる。



「む、無茶言わないでっ」

「何が無茶だ、簡単なことだろ」


「どこが簡単なのよ!

先生見なきゃ授業受けらんないし、

店員さん見なきゃ買い物出来ないし、

あんた以外を見ないなんてこと、出来るわけないでしょ!!」


「そういう意味じゃねぇよ」

「じゃどういう意味よ!」