「ナツが『アヤを好きな振りをしなきゃならない男子がかわいそうだわ』と言ったあたり」
大地の言葉に、私はホッとした。
私が海翔と多分付き合っているであろう話をしたのは確かナツがそう言った前だし、
男友達に海翔との顛末が知られるのはかなり恥ずかしいから。
「だから事情はよくわかんねぇけど。
でもアヤ困ってるんだろ?
だったら俺が動く理由はそれで十分」
そう言った大地に、ナツが小さな声で「報われないやつ……」と言ったのが聞こえた。
『報われない』ってなんだろう。
「ま、そこまで言うなら、あとはアヤ次第じゃない?」
突き放すようにそう言ったナツが、声のトーンを落として呟いた。
「あたしは……つらくなるだけだと思うよ、大地。
やめといた方がいいと思う……」
それは誰に向けられたものなのかわからないまま、ナツは言葉を続けた。
「でも男子への行動は、あたしらがやるよりいいかもね」
どーする? と視線で問いかけるナツ。
私は大地に向きなおり、頭を下げた。
「手を、貸して下さい」
頭の上に、ポンと大きな手が乗せられた。



