何ひとつ面白い話なんてしてませんが!
キッと睨み付けるようにして振り返ると、ゴゴゴゴゴとしか形容の出来ないどす黒いオーラをまとい、にっこりと微笑む大地大明神の姿があった。
「俺も一口乗ろうじゃねーか」
腕組みしながらひくひくと口角をひくつかせ、こめかみに血管が浮き出ている大地。
私はブルッと全身が震え、睨みかけた視線を慌ててそらした。
睨みかけたことが、
ば、ばれてませんように。
「えぇー?
大地が入ってくると何かこじれそうで嫌」
ナツーー!!
ナツお得意の一刀両断さが、今は恐ろしい。
「だって大地の場合、アヤに対しての」
「うわっ、ナツやめろ!!」
もがもがと大地に口を塞がれたナツ。
それを見て不思議そうにする私に、大地はお愛想笑いのようなものを浮かべた。
「き、きこえなかったよな?」
「何が?」
首を傾げた私に、ホッとしたように大地は「なんでもない」と言う。
「ところで何処から聞いてたの……?」
恐る恐る話題を戻した私に、大地は気まずそうに言った。
「けっして立ち聞きしようと思ったわけじゃねぇぞ」



