「ま、それは冗談だけど」

真顔のナツはそう言いながらも、私に釘をさすのは忘れなかった。


「色々気を付けたほうがいーよ。
寮に住むことは内緒にしたほうがいーかもね」


……色々ってなに?


「何を気を付ければいいの……」

新生活、早くもピンチ。


半泣きになりながらナツにすがるような目を向けたけど、苦笑で返された。


「色々っては色々だよ。
まぁ、学校では私がフォローするからさ。
なるべく海翔様に関わらないようにね」


「ナツ~ありがと~!!」


がばっとナツに抱き付くと、ナツはよしよしと私の頭を撫でてくれた。


もつべきものは友達だよね!!


「ねぇ、ナツ。このあとさ……」


どこかに遊びに行かない?と言おうとした私の言葉を遮るように、ガラガラと教室の扉が開いた。


その瞬間、教室にまだ残っていた女子から、黄色い悲鳴が上がる。


「海翔様~!」


ナツに抱き付いたまま、扉を見ると。


今朝の王子様が立って、私を見ていた。


え?え?

プチパニックの私に、海翔…様はにっこりと微笑み手招きする。


その笑顔、天使級。