泣いた赤色、うたかたの青

その夜のうちに二人で村を出て、夜道を歩きながら少女は自分の嘘を白状した。

人魚の少女にはちゃんと昔の記憶があり、名前があり、忘れてしまいたいというつらい過去があった。

そこには不思議も神秘もなくて、




ただ一つだけ、不思議なことが起きた。


ずっと、沢の水のように青く見えていた少女の瞳と髪の毛は、
村を出てから明るい日差しの下で見ると、何のへんてつもない、綺麗な黒い色だった。


初めからそうだったのか……

だとしたらどうして、あんな色に見えていたのか──


そもそも彼女の髪の色が青色に見えていたのは、村の皆もそうだったのだろうか。

私だけだったのではないだろうか。


だとしたらあの青色は、
この異端の身が、自分と同じように異端の色を欲して見せた幻だったのかもしれない。