外からこの店を眺めた時には、お洒落な熱帯魚ショップなのだろうかと思った。

けれど入り口の格子戸の上に吊り下がった、木製の看板には


人魚のカフェ
~泣いたあかおに~


と書かれていて、
「えっ喫茶店なのか」と驚いて、
足を踏み入れたのだ。

この店を初めて訪れる客は、大抵そうである。


人魚に赤鬼。
どちらもおとぎ話ではお馴染みだ。

たいそうファンタジックな名前のお店だった。


「いらっしゃいませ」

あなたがテーブルの上の青い魚を眺めていたら、店員がメニューと水を運んできた。