―動く― 「雨…かよ」 さっきまでの夜の風景はいつの間にか重い雲に覆われ、ポツリポツリと雨粒が落ち始めていた。 「天気予報はほんとあてになんないよなぁ」 脇に抱えた茶色の大きな封筒を確認する。 付いた滴をそっと指で拭った。 愛おしそうに。 「走るか…」 優は封筒を大事そうに抱えると走り出した。 「腹減ったぁ」 時計は11時をとっくに過ぎている。