遥斗は早足で彼女の近くまで行くと、いったんスバルを振り返ってウインクして見せた。



「バカなヤツだな」



スバルは愛想笑いを浮かべる。



遥斗はやたらウキウキしながら呼吸を整え、一旦、彼女を追い越すと何気に振り返った。



「スバル!」



白々しく、スバルを呼ぶ為に振り返ったという小芝居をした。



スバルはゆっくり歩きながら遥斗の反応を伺う。



「ん?」



遥斗の動きが止まった。



彼女は遥斗と生徒たちの間をすり抜けて行き、遥斗だけがそこに立ち尽くした。



「何だよ。魂抜かれたみたいな顔して。そんなに美人だったのか?」



「…あ、いや。ア、アウト。アハハ。お前の言う通り…だった。ハハハ…」



「だろ?だから言っただろ」



「…あぁ。そうだな。ハハハ…」



「何だよ。大丈夫か?」



ちょっとボケた顔が気になる。



「何が?」



「いや…」



(よっぽど期待してたのか?バカなヤツだな)



スバルはそれ以上は何も言わず、2人は黙って学校へ向かった。