―兄弟の想い―
「ただいま」
「お帰り!空」
朋が台所から顔を出した。
空は玄関をサッと見て、誰が帰って来てるのかチェックする。
「まだ誰も帰ってないの?」
台所に入るなり冷蔵庫を開けた。
「コラッ!手を洗ってから開けろって。あ…、さっき駿にぃからメール来て、少し遅くなるって」
朋は空が出しっぱなしにした牛乳を冷蔵庫にしまう。
「ふぅん。朋にぃは早かったんだね」
ひと口牛乳を飲むと、きちんと重ねてある漫画の1番上を手に取り、パラパラとめくった。
「今日は延長保育の当番じゃなかったからさ」
「ほんとに物好きだよな。幼稚園の先生なんて女がなるもんだと思ってたよ」
「空は知らないんだよ。小さい子の可愛さを」
朋は笑いながら空の頭を撫でた。

