しばらく歩くと駅前の本屋に着いた。
「ありがとう。もう大丈夫。じゃあね。バイト、頑張って」
「おぅ…」
スバルは従業員の入口へ向かい、つかさは店の中へ入った。
「…っと、どこにあるのかなぁ?」
ゆっくり歩きながら雑誌コーナーを軽く眺めた。
「へぇ。みんな目が大きくてパッチリしてるのね…。うわぁ、このヘアースタイル…、すごい。歴史の教科書に載ってるフランスの王妃だ…」
ファッション雑誌の表紙のモデルを見ながら思わず呟いた。
パソコン…車…バイク…釣り…
一応、並んでいる本の表紙は目でなぞって行く。
海外が長いとはいえ、両親に日本語はしっかり教えられて育った。
だから、困らない程度の漢字も読める。
「綺麗…」
思わず1冊の本の表紙に目が止まった。
キラキラ眩しい海と空。
真ん中には大きな魚が写っている。
思わず手に取り、見入った。
「釣り、好きですか?」
「えっ?」
つかさの後ろで男の人の優しい声がした。
背はそんなに高くはない。
髪は少し茶色。
目尻を下げて笑うその顔に、こちらまでつられて微笑んでしまう。
「いえ、あ…ただ、この海と空が綺麗だなぁって」

