妹A ~5人兄弟+1~

「高津!高津はいるか?」



「いますよ」



遥斗が体を少し反らして、教室の前の方の扉へ顔を向けた。



「先生、何か用ですか?」



「お前、この間屋上の鍵返したか?」



「鍵?…あっ、スバルのヤツ、返してなかったのか…」



「何ブツブツ言ってるんだ?都築がどうかしたのか?」



「いえ、何でもないです。…あの、家に忘れて来たみたいなんで。明日、持って来ます。すいません!」



「必ず明日持って来いよ」



「はい。…あぁっ!!!」


遥斗が一点を見つめて叫んだ。



「おい、どうした!?」



先生が驚いて聞いた。



「いや…、その、何でもないです」


明らかにあたふたしている。



「そうか?疲れてるんじゃないのか?早く帰れよ」



遥斗の肩をポンと叩いて先生はさっさと出て行った。



遥斗は呆然とつかさの席を見ている。



さっきまで…、ついさっきまで机の横に掛けてあった鞄が無くなっていた。



「マジかよ…」



さりげなく…、一緒に帰ろうと企んで待っていたのに。



小さな計画が失敗し、思い切り落ち込んだ。



「どうしたんだよ」



「あ…みんな、ごめん。先、帰るわ。じゃ!」



遥斗はすぐに気持ちを立て直し、急いで教室を出た。