毎年…そうだ。
運動会と発表会の時期になると必ずこういう親が出てくる。
普段は何も書かれない園児の連絡帳が、数名の母親の切実なお願い帳に変わって行くのだ。
みんな、指揮者か小太鼓を狙っている。
「指揮者は毎年、年長さんがなる事に決まってるんです。夏希ちゃんはまだ年中さんですから。楽器も、みんなに一通り練習させて、希望も聞きながらこちらで色々判断して決めています」
朋は嫌な顔をせず、絶対感情的にならずに話す。
「そうですか。指揮者は分かりましたけど、どうして小太鼓じゃないんですか?」
小太鼓は鼓笛隊の中でも華があって可愛らしい。
同じ太鼓でもじっとしている大太鼓よりずっと人気があった。
「夏希ちゃんはピアノを習っているから、鍵盤ハーモニカがすごく上手かったんです。夏希ちゃん本人もやりたがっていたので決めました」
明るく答える。
「夏希が?夏希がやりたいって言いましたか?それはないです。指揮者がだめなら、小太鼓がいいって言ってたんですから」
分かってはいるが、やはりしつこい。
(子供達はどの楽器でも一緒なのに…)

