妹A ~5人兄弟+1~


「あっ…」



優の足の近くに何か落ちている。



「さっきの子の?」



優はしゃがみ込んでそれを拾った。



「生徒証?そういえば、名前も知らなかったな」



裏返しになっていたそれを拾い上げるとゆっくり表に返す。



その瞬間、優の顔が凍りついた。




「夏川…つかさ…。夏…川…つか…さ。あの子が…つかさ?」



優は生徒証から目を離す事が出来なかった。
全身が小さく震えている。



この間、探偵事務所で教えてもらった名前。



ずっと探していた『妹A』



「あの子が…。あの子が…」



やっと探し出した喜び。
手の届くところにいる安堵感。



だけど―



優は好きになりかけていた自分の気持ちを、一瞬でバッサリ切り落とした。



手が届いたのに、もう絶対手が届かない…。



あの時抱いた気持ちは恋ではなく、妹に対する兄としての気持ち…



だったんだ。



ほんの一瞬でざまざまな思いが巡った。