萌絵は「もう二度と会えない」を読んでいく内に、どんどん物語に引き込まれていった。

眠気等すっかり吹き飛び、主人公である高校3年生の女の子に同調し、一緒に悩み戸惑い、余りの切なさに涙した。


萌絵が読み終えた時には、時計は既に1時を回っていた。

ボロボロと泣き続け、萌絵の目は真っ赤になり腫れていた。


「こんな小説が書けるなんて…」

物語に感動した事よりも、自分とは全く違う高い次元で構成された文章に愕然とした。


こんな文章を書ける人がいるなら、私がいくら頑張って書いても話にならない。

"才能がある"というのは、こういう人の事を言うのだろう。


萌絵は自分が目立てなかった事や認められなかった事を、この作品に出会って妙に納得した。

と同時に、才能溢れる桐島 花音に尊敬の念さえ抱いてファンになった。


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