「器だよ。閉じこめられてる部屋みたいなものだよ。」 春の顔を覗き込んだ。春はきょとんとしているのかな。 (こわせるのー?) 「壊せるんだよ。欲しいものの為には、人間は強くなれるのだからね。」 何故だか、悲しくなって春を抱きしめた。 抱けば温かい筈なのに、何も感じない。 それなのに声ははっきりと聞こえるのだからおかしいものだ。 (父上のかたなより?)