刹那、鏡の中の俺の顔がグニャリと歪み
今度は俺自身ではなく、色んなヒトの顔がセピア色になって映し出される。
ダンボールに入る美しい少女。
優しく微笑む可愛らしい少年。
いつも本を読んでいる可憐な少女……。
どれもこれもが美しく、輝いて見えた。
「ル…ナ……」
誰のものかも分からないまま、呟いた綺麗な名前は
頭の中で弾ける様に散らばって、大切な思い出を撒き散らしてくれた。
「…母さん、思い出したよ」
「そっか…。良かったね…」
もう一度頭を撫でて 母さんは一歩下がる。
その両脇に父さんたちが寄り添った。
「俺…ずっと、言いたい事があったんだ」
「うん…」
「あの時…。くだらない事で喧嘩して、そのまま家飛び出して…。後から凄く後悔した」
「うん…」
「あの時は、いつもの日常が壊れるなんて夢にも思わなくて。
きっとすぐに仲直りできるんだと思ってた」
「うん…」
「だから…言いそびれた事があるんだ」
きっと俺は、それを伝える為にここに居る。
とめどなく流れる涙が邪魔をするけれど
ちゃんと、言うよ。
「みんな、ゴメン…。あと、ありがとう…」
「うん、それが聞けてよかった…」


