胸の上で、誰かが 飛び跳ねてる。
でも眠いんだ。頼む、あと5分…――
「起きろこの…チ●カスアニキーーー!!!」
がばり
布団と共に、腹筋の力だけで起きあがる。
腹の上に目をやると、やたらと鮮やかな世界の中に、もうずっと会っていなかった彼女の姿があった。
「月(ユエ)……」
彼女はあの時と何も変わらず、長い髪をゆらゆらとさせながら笑っていた。
…あれ?あの時…?
あの時って、なんだ?俺たちはずっと一緒に暮らして来た筈なのに。
ふとした違和感を感じて眉をひそめたが、月は思考を遮る様に笑いながら、とんでもない発言をしてくる。
「あ、起きた。って事は、お兄ちゃんはチ●カスなんだ?」
「はッ…はぁ?ってか、そんな言葉 何処で覚えてくるんだよ…。
まだ小6のクソガキのくせに」
「うるっさい!自分だってドーテーの中坊じゃんかぁ!!
それに、あたし 彼氏位いるもんねー」
「彼氏ぃ~!?てめ…ッ!俺様に断りも無く…」
「僻む(ひがむ)なよーお兄ちゃん。ってか、断ったら何かあるワケ?」
「デートの度に俺が邪魔をして、貴様の幸せをぶち壊してやる」
「おかぁさぁーん!!!お兄ちゃんが虐めるーーー!!!」
ドタドタと、どこかに駆けてゆく愛しい妹の後ろ髪を見ながら
何かおかしい
そう思っていた。


