粗方の作業が終わり、息苦しくなった部屋を見渡す。


「なんか、あちぃな。この部屋は」


シャツの襟元をパタパタと動かし、汗ばんだ肌に風を送る。



「あ、準備できたぁ?じゃあ、そこの、ボンベみたいな容器、持ってこっちに来て」



アルコールランプを手に持ちながら、窓枠に腰かける空澄が俺に指示を飛ばしてきた。



「お前がやれよ!!見た所、働いている素振りは無かったんですけど!?」



「えー?だって…

ほら、見てよ。この僕の細い腕を!!


誰がどう見たって、力仕事に向いてない華奢な身体じゃない。


そんな僕に、キミは労働を強いるというの…!?酷いよ…!!」



胸に手を当て、目に涙を浮かべ。


被害者顔でそんな台詞を吐かれたりなんかしたら


きっとどんな悪人でも動揺するに違いない。



かくゆう俺も。



「わ…分かったよ…」



と、渋々任に付く事になったのだった。



ボンベと言ってもひざ下位しか高さのない容器だったので、片手で持ち上げようと、力を入れたのだが…


「ん゛!!」



意外に重い。



それでも、何らかの意地が働いたらしく、無理して片手のまま移動する。



「おー。男らしさのアピールですか?


でも…僕に見せても、キミに恋愛感情は湧かないんだ、ごめんね」



空澄が心底申し訳ないという顔で謝ってきたが、アピールしたいのは貴様では無い。



告白しても居ないのに振られて、妙にがっくりきた時。


インカムから、ブラスカさんの叫び声が聞こえて来たのだった。