クロスが止まる。それを見たアダムが後方に引いた。
すかさず待てとクロスが追おうとしたが。
「聞こえませんでしたか、私はストップと言ったのですが」
クロスの前に、猫を抱いた姫が立ちふさがった。
姫が止まれというのなら止まるが、クロスにとっては納得できるものではない。
「姫、どいて……!いや、危ないですっ。俺の後ろに」
「行かなくても大丈夫です。何せ、この勝負はクロスの勝ちなのですから。ねえ、白髪のお人?引き金を引かなかった、あなたの負けだ」
姫の問いかけがアダムに移る。当たり障りない笑顔をしているくせに、言っていることが。
「おいおいおい、やな女だな、あんた」
アダムの弱さを示すものなんだから、聞く方は体裁が悪くなる。


