だから気分が悪い。鏡を見ているようで、敵に情を持っちまいそうだと――アダムの手が、かすかに揺らいだ。
「――っ!」
見逃さなかった好機。つっこむクロスは――愚かだった。
いくら敵に変化があったとしても、手が一ミリ動いた程度で“向けられた銃口”は変わらない。クロスの死は変わらず眉間に。
――最初から、クロスは無傷を期待していなかった。
無謀なつっこみ。だからの愚か。これは、撃たれる覚悟あっての突進であるのだから、クロスが鉛玉をくらうのは明白。
アダムの指が引き金を抱く。
「チッ」
抱くが、引けなかった。
真っ直ぐに進みくる奴(剣)。肩を持っていく気か、振り上げられて下ろされた刃先。
肩を切られた後に撃つかとアダムがその気でいれば。
「はい、ストップ」
誰も傷つけずにして、勝負は終わってしまった。


