「…………」
「まあ、俺がどれだけ殺しているか分かんねえなら答えようがないわな。どこで育ったかは知らねえけど、お互い、“人を殺して生きる世の中”にいたらしいな」
「……っ、違う」
答えたクロス。瞳が僅かに震えた。
違うんだと、俺はそんなんじゃないんだと、取り乱しそうな心をクロスは精一杯に内にとどめた。
取り乱したら最後、自分は“そうであった”と認めることになるのだから。
「彼女の隣にいるならば、そんな世の中、俺は認めない!」
「……、チッ。最悪だ、お前。見ていて胸くそわりぃ」
クロスの美談にではなく、その美談を理解してしまったことによる気分の悪さ。
思い出したる遠い時。
人を殺さなくても生きていられたあの優しい時。
アダムにもあったのだ、クロスと同じ心構えが。


