フェイクを使った奇襲。目線をそらさせたのはもとより、白髪が近づいたのにクロスは気づきもしなかった。
足音がなかったのだ、己を攻撃しようとする敵の気配がなく、もろに一撃を受けてしまった。
足音を立てない殺人鬼。死に神の類にしか見えず、ましてや蹴ったあとの“とどめ”まで抜かりない。
「クロス、大丈夫ですかっ」
「っ、姫、逃げて!」
自分が銃口を向けられている以上にクロスが焦る。
白髪は今、姫の近くにいるのだ。もしも、白髪の銃が姫に向こうものなら鉛玉くらっても刃向かう心持ちだったが。
「だとよ、女。あんたは邪魔だ。俺たちに構わず、そっちの猫と遊んでいろ」
もとから、姫は白髪の眼中に入っていなかった。


