それでもなおかつ、男の目は姫に。クロスが姫を見て知り合いですかと聞いても、彼女は首を振るだけで。
「ミーっ」
彼女に抱っこされていた猫が、地に降りた。
しなやかな着地をし、とてとてと男の方まで走っていく。
「見ねえと思ったら、なんだ、女つれてきたか」
「ミィ」
白猫相手に話す男。姫みたく猫語が通じているのではなく、ただ単に飼い主が猫に話しかけたみたいだった。
ミーの飼い主。見た感じの印象はそれ。
ペットは主人に似るというが、随分と両者はお似合いだ。
白猫同様、男の髪も白かった。老人ではなく青年だというのにあの白さ。脱色ではなく、自然とあんな髪色になったのだろう。濁りない純白が、ガラの悪い男によく合っているのが不思議だが。


