ますます珍しい光景だった。ロードが姫以外の人物に対して、下手(したて)にいることが。
クロスたちの前の席、向かい合うように座るロードに。
「お前、弱みでも握られてんのか」
聞いただけなのに、お盆を投げられた。
「黙れと言うのはこれで二度目だ。次はケーキが乗った皿を投げつけるぞ」
「っっ、流血シーン云々言っていたくせに……」
ヒリヒリする鼻を押さえてぼそりとクロスは呟いた。
どんな成り行きかは知らないが、ロードもこの世界にいる限りは役を得たのだろう。
そうしてこんなとこで呑気にお茶会ときた。これはロードをけなすには、いいネタになるんではないかとクロスが思っていれば。
「ミーっ」
座るロードの膝上に白猫が乗った。


