指差すクロスの先にあるのはタキシードを着たロードの姿。
結婚式の服とは、クロスにしては的を射たセリフで、どこぞの貴族スタイルだった。
立派なシルクハット。ハトを出してもおかしくはないほど立派だった。
「身だしなみは完璧にしなければいけない。それこそが姫に仕える臣下の務めであり、君のような変態がビルディの隣にいるのが腹立たしい」
「んなっ、ムッツリのくせしてどの口がほざくっ」
「君こそ、他人をとやかく言う資格はあるのか」
ちらりと、ロードの目がクロスの頭上に。
しまったっと思っても遅く。
「だらしのない耳だ」
最高にけなされてしまった場面。
だらしのない耳。このウサ耳に一番合うセリフではないか。
憐れみと蔑みがまんべんなく含まれた声色も百点。ウサ耳の当事者を逆上させるどころか、落ち込ませるけなしかたとなっていた。


