「おや、役がないとは。この世界にいる限り、そんなはずは」
「役がそんなに大事ですかね。役でやることが決まり、その者の存在に初めて“在る意義”が持たされたとしても、ははっ、私には必要なくてな。
役を持たなくても、私はやることを決められるんですよ」
「なるほど、役を捨てましたか。自分のやりたいことをやるために」
「そういうわけでもありませんよ。もとから私の役柄は、私のやるべきことに沿っていた。お姫様とは、考え方が違う。
私にとって役柄なんて、有って無いようなものだ。ならば、これは私の意志と確固たる形が欲しいために役柄でこうやるとは言いたくないんですよ」
「そうまでして、形付けたい意志――やりたいこととは何でしょうか。とても興味深い」


