「こら、犬なら立て」
ぐいぐいと前足を引っ張るクロス。ふて寝をしていたマンナカだったが、さすがにうっとうしく感じたようだ。
顔をあげて、助けを求めるように姫を見る。
「いってらっしゃい、マンナカ」
ダメだったので、次はロード。
「そのバカに付き合ってやれ」
両者とも行けとしか言わずに、マンナカは自分の前にいる男に行きたくないとした眼差しを送ったわけだが。
「走るぞー、鍛錬ついでに散歩だ」
やる気満々の瞳。
何が楽しいのか、何を喜んでいるのか。マンナカは不思議そうに、その力強い目を見て。
「これが、私たちの世界ですよ。ちっぽけだけど、幸せしかない優しい世界」
耳に入った優しい声。
にっこりと女神みたく笑う女性に――マンナカは一度頭を下げた。


