本の表紙を優しくなぞる姫。裏表紙から表紙になったその絵は、裏表紙と違い二人の人しか書かれてなかった。
手を繋いで、後ろを向いている。二人でどこかに行くような感じ、物語のスタートを思わせた。
ただクロスの気になったことが一つ。
「題名、ありませんけど」
「ああ、この絵本はね。“読み終えた人が初めて題名をつけられる”んですよ」
「へえ、変わってますね」
「面白いでしょう。題名を決めるのは読んだその人だけ。ストーリーは同じなのに、読む人にとってこの絵本は、“何にでもなれる”」
そう言って、姫はその絵本をクロスに渡した。
読んで下さい、ということなんだろう。
自分の膝上に本を置いて開こうとして――ふと、甘い匂いがした。


