姫様とウサ耳はえた金髪童顔



* * *


姫がいるだけで、何でもない場所が聖域に見える。


庭、何もない、黄緑の絨毯(草)が生える野原。屋敷の南側には一本の木があった。

森から木々から離れて一人ぼっちの木。

大きくも小さくも、太くも細くもない、普通の取り立て見栄えもしない木。さわさわと葉が揺れると、木の下の影も揺れる。


姫は、その光と影が混ざった木の幹で寝ていた。

背中を木に預けて、すやすやと。白いワンピースに赤い髪。いつもの姫。いつものように綺麗でまぶしかった。


そっと近づく。
外で寝たら風邪引きますよ、と言うつもりだった。


見れば、彼女の真横には本があった。薄い冊子の本。珍しい、いつも分厚い本ばかり読んでいるのにと彼の目線は本に移った。