「ロ、ロード?」
「は、話しかける、な……」
一ミリたりとも動けない痛みらしい。
不自然な姿勢で立ったまま、ロードは銅像になった。
正座をして足痺れた奴をつつきたい気持ちになったクロスだが――聞こえた遠吠えで視線を変えた。
『――――』
天から落ちる怪物。
クロスにはそう見えた。
高い身長が崩れていくのは、建物の崩壊と変わりなかった。
周りを巻き込む崩れ。崩壊音は派手で、地鳴りもひどいもの。
ただ崩れまいとケルベロスは腹が地面につこうとも顔だけはしっかりとあげて。
『……、すまない』
無念そうに呟き、顎を地につけた。
クロスたちへの言葉じゃない、悲しみに溢れた“彼”の目はずっと“近く”を見ていた。


