勝利を思ったクロスは、つい剣を持つ手から力を抜いたわけだが。
「――ぁ」
忘れていた、自分は暴れる獣の頭に乗っていたことを。
掴んでいられるものがなく、痛みで錯乱したケルベロスの暴走に巻き込まれ、頭から投げ出された。
吹っ飛ぶ。
地上が遠い上空から。あの巨大な獣の一番高い場所に登っていたんだ。
投身自殺気分を味わい――大聖堂の庭園に落ちた。
白タイルとは違い、バラと草が覆い尽くす草花の地面。土をへこませたクロスは――仰向けのまま動かず。
「おい……、おい、クロス!」
自分の痛みを無視して、ロードがそこへ向かった。
げほっ、と走る途中に血を吐いたが、口から垂れる液体も拭わずに構わなかった。


