* * *
クロスたちは、怪物にとっての羽虫だった。
弱者。楽に踏みつぶせるモノ。――でも、簡単には踏みつぶせなかった。
『――』
「このっ!」
「倒れろ……!」
羽虫二匹。すばしっこく鬱陶しい虫たち。
人間が、寄るハエを簡単に捕らえることが出来ないように、弱者でも怪物相手を翻弄させることはできた。
これがクロス一人ならば、一つ首の獣はこともなげに“その獲物”に集中するだけで良かったが。
ただでさえ、素早い小物が二匹になったのはケルベロスにとっては痛かった。
これが三つ首ならば――考えて、ケルベロスはそれに首を振った。
“後は任せた”
“うん、任せた”
――情けない考えは捨て、必要のはたった二つの言葉だけで良い。


